
メンバー
サルに問ふ
行動の特性は、身体の筋・骨格のかたちやはたらきによって決まります。私たちの行動は、人類進化700万年の間に身体に起こった変化の積み重ねの上に成り立っています。では、ヒトの特徴とはなんでしょうか。ヒトだけ見ていてはその全容はわかりません。私たちは、進化の隣人たるサル類の身体のかたちと動きを観測し、その動きの効率やパフォーマンスなどを明らかにすることで、人類が獲得した、直立二足歩行、手の精緻な制御、そして言語の進化のプロセスを解き明かそうとしています。

西村 剛
教授
音声言語の進化、サルの音声解剖生理・バイオメカニクス
言語の進化、とりわけ言語コミュニーケーションの媒体である音声言語の生物学的基盤の進化プロセスについて研究を進めています。サル類の音声器官の解剖生理学、行動学的実験、音声の音響学的解析、振動の数値シミュレーション、脳の電気生理学的実験などさまざまなアプローチから、音声言語を獲得したヒトの特性を明らかにしようとしています。その他にも、鼻腔の温度・湿度調整特性に関する数値流体力学シミュレーションや、化石霊長類のCT画像解析による系統解析や進化プロセスに関する研究など、時々のチャンスを足がかりにヒトの進化に関する多様な研究に取り組んでいます。
2004年日本霊長類学会高島賞、2020年イグノーベル賞共同受賞、2024年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)。

中野 良彦
准教授
運動と形態の系統発達から見た人類進化に関する研究
ヒトの進化過程について直接の証拠を示すものとして化石があります。こ れまで、ケニア北部地域において化石調査に参加し、ヒトと類人猿の共通祖先と考えられる新種の化石を発掘してきました。化石はケニア国内から持ち出すことはできないので、ケニアの博物館で計測や形態比較などを行ってます。
化石証拠は断片的なものがほとんどであり、それだけでは進化について十分な情報をえるには不十分です。そのため、現生霊長類を用いた比較研究がいろいろな面で行われています。その中で、多様な霊長類の運動パターンへの適応がそのようなものであったのかについて知るために、多種の霊長類の運動、特にどの種においても見られる木登り運動に注目し、運動学的な比較解析を行っています。

設樂 哲弥
助教
直立二足歩行の進化、サルの歩行のバイオメカニクス
直立二足歩行の進化、特に中殿筋の機能変遷について研究しています。人類を定義する重要な特徴である直立二足歩行は、片足だけで全身を支える期間が存在する点で、四足歩行に比べて左右に不安定です。中殿筋は、この左右不安定性へ対処する身体要素の一つです。筋骨格モデルを用いたシミュレーションや、筋活動の解析を通じて、中殿筋の機能変化をもたらしたメカニズムを解明しようとしています。
2023年日本人類学会若手会員大会発表賞、2024年大阪大学賞(若手教員部門)。