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設樂哲弥助教(当時、大阪大学人間科学研究科大学院生)は、ニホンザルの中殿筋が股関節の内旋に働くことを明らかにしました。中殿筋とは骨盤と大腿骨近位部を結ぶ筋肉で、ヒトでは骨盤の傾斜を防ぐことで、左右に安定した二足歩行を実現しています。二足歩行に適したヒトの中殿筋は、サル類が持つ身体的基盤をもとに進化したと考えられていますが、そのサル類の中殿筋が彼らの主要な運動様式である四足歩行にどのように寄与しているのかが未解明でした。本研究では、屍体標本から構築した筋骨格モデルに実験で計測した四足歩行データを入力することで、実運動時 における中殿筋の働きをシミュレートすることに成功しました。その結果、ニホンザルの中殿筋は従来考えられていたような大腿を後方に引く動作ではなく、つま先を内側に向けるような動作に働くことがわかりました。本成果は、古典的な形態研究では解明できなかった動的な筋の働きを明らかにし、中殿筋の機能進化史の根本を問い直すきっかけとなりました。
Shitara, T., Goto, R., Ito, K., Hirasaki, E., & Nakano, Y. (2022). Hip medial rotator action of gluteus medius in Japanese macaque (Macaca fuscata) and implications to adaptive significance for quadrupedal walking in primates. Journal of Anatomy, 241(2), 407-419.
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